“狙われる前に備える” WordPressセキュリティ強化ガイド

WordPressは世界中で広く利用されているCMSですが、その人気ゆえにセキュリティの脅威にさらされるリスクも高くなります。特に不正アクセスやマルウェア感染といった攻撃は、適切な対策を講じていなければ深刻な被害をもたらす可能性があります。
本記事では、WordPressサイトを安全に運用するための基本的なセキュリティ対策から、より高度な防御手段までを詳しく解説します。
初心者の方でも実践しやすい手順を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
1. なぜWordPressのセキュリティ対策が必要なのか?

WordPressは世界中で最も利用されているCMS(コンテンツ管理システム)であり、全ウェブサイトの約40%がWordPressを使用していると言われています。利便性と普及率の高さから、個人ブログから大企業の公式サイトまで幅広く活用されています。
しかし、その人気の高さがゆえにサイバー攻撃の格好の標的となるリスクも大きくなっています。
代表的な攻撃としては、以下の3点です。
- ブルートフォースアタック(総当たり攻撃)
自動化されたツールを使って、管理画面のログインフォームに対し無作為にパスワードを試行される攻撃。
安易なユーザー名とパスワードを設定していた場合は即管理画面に侵入される可能性があります。
- SQLインジェクション
フォームや検索窓などに不正なSQLクエリを入力し、データベースへアクセスする攻撃。
適切なエスケープ処理が行われていない場合、顧客情報や管理データが盗まれたり、意図しない操作が実行されたりする危険があります。特に、セキュリティ対応が不十分なプラグインを導入しているサイトは要注意です。
- マルウェアの埋め込み
サイトの脆弱性を突いて、不正なスクリプトを挿入する攻撃です。
このようなスクリプトは、訪問者の情報を抜き取ったり、他の悪意あるサイトへ自動でリダイレクトさせたりといった動作を行うことがあります。主に、アップデートされていないテーマやプラグインが攻撃の入り口となります。
上記のような攻撃はとてもメジャーな攻撃であり攻撃されることで、サイトに深刻な被害が生じる可能性があります。
では、具体的にどのような被害が出てくるのか、ここからは代表的な被害例として4つほどご紹介していきます。
1-1. 個人情報や機密データの流出
この被害は普段ニュースを見ている方なら頻繁に目撃する被害かと思います。
無数にあるデータの中でも個人情報は狙われやすい傾向にあり、これはWordPressサイトでも発生する可能性が非常に高い被害といえるでしょう。
適切なセキュリティを施してなければ、WordPressサイトを通じて収集した個人情報や顧客データや業務に関わる重要な内部情報が外部に漏洩するなどの甚大な信頼喪失につながる恐れがあります。
たとえば、ショッピングサイトおよびECサイトであれば氏名・住所・購入履歴・決済情報などが攻撃者に渡るリスクがあり、実害が発生した場合には損害賠償請求や法的措置を受ける可能性も否定できません。
情報漏洩は一度発生すると回復に長期間を要するため、セキュリティ設定が最も重要であり慎重な管理が求められます。
1-2. サイトの改ざん・マルウェア感染
この被害の重要な点は、「気づきずらい」という点です。
攻撃者によって、サイト内に不正なコードやスクリプトが埋め込まれ、見た目は通常通りでも、裏では訪問者を悪意のあるサイトに誘導したり、ウイルスを拡散させたりする仕組みが動作するようになります。普段サイトをくまなくチェックしていれば気づけますが、ぱっと見で気づくことは非常に困難といえるでしょう。
このような状態が続くと、ユーザーからの信頼を一気に失うだけでなく被害が訪問者に波及することで、運営者自身が加害者とみなされる事態にもなりかねません。特に古いテーマやプラグインにはこうしたリスクが潜在しています。
1-3. 検索エンジンからの評価低下・ペナルティ
Googleをはじめとした主要な検索エンジンは、マルウェア感染やスパム行為が確認されたサイトに対して警告を表示したり、インデックスから除外したりする対応を取ります。
もし、外部からサイトに対して何らかの攻撃をされた場合には攻撃されたサイトに対してペナルティを受けることがあります。
一度ペナルティを受けると、検索順位が大幅に下がるほかSEOの効果が失われて集客力に大きな影響を及ぼします。さらにペナルティを受けた際の復旧手続きも複雑で、短期間での回復は難しくなります。長年かけて築き上げた検索評価を一瞬で失うリスクを常に意識する必要があります。
1-4. サイトの完全な消失
攻撃によって受ける被害の中で最も深刻なものがサイトが完全に消失されることです。
完全な消失は、バックアップを適切にとっていない限り、元のサイトの復元は絶望的になります。
これは悪質な攻撃により、サイトのファイルやデータベースが完全に削除されたり、アクセス不能な状態にされるケースもあります。
特に中小規模の事業者や個人運営者にとっては、サイトの消失は事業継続に直結する致命的な問題となるため、常に「万が一」に備えた運用体制を整えておくことが求められます。
2. 基本のセキュリティ対策

サイトを攻撃の危険に晒さないためにも、まず基本的なポイントのセキュリティを設定するところから始めてみましょう。基本的なセキュリティといえど、この設定を怠ると、どれほど高度なセキュリティで防御策を講じても意味をなしません。
WordPressでは設定や管理の仕方を見直すだけで、簡単にセキュリティを強化する方法も多く存在します。
ここでは、WordPressサイトを安全に運用するための基本的なセキュリティ対策について詳しく解説していきます。初心者でも簡単に行える対策となるので、ぜひ参考にしてください。
2-1. 定期的なアップデートの実施
WordPressではWordPress本体やテーマとプラグインが定期的にアップデートされます。このアップデートは新たに発見された脆弱性が修正することを目的としているため、この更新を怠ると既知の脆弱性を突かれ攻撃者に侵入される可能性が高くなります。
少しでもサイトを攻撃されるリスクを回避するためには、定期的なアップデートを忘れないようにしましょう。
対策方法
- WordPressの「更新」セクションで、最新バージョンの更新を定期的にチェック
- 自動更新機能を有効にし、手動での更新忘れを防ぐ
- プラグインやテーマの更新前には、バックアップを取得し、不具合発生時に備える
- 使っていないプラグインやテーマは削除し、セキュリティリスクを減らす
上記はマルウェアの埋め込みの対策としてとても有効です。
更新はWordPressの管理画面から簡単に行えますので忘れないようにしましょう。
2-2. 強力なパスワードと二要素認証の導入
安易なパスワードの使用は、ブルートフォースアタックによる不正アクセスの原因になります。
管理画面にログインに使用するパスワードは推測されにくい強力なパスワードを設定することや、二要素認証を実装するなどログイン時のセキュリティを強化しましょう。
対策方法
- パスワードは最低12文字以上、英数字・記号を組み合わせる。
- ユーザー名に「admin」を使用しない。
- WordPressログイン時に二要素認証を導入し、スマートフォンアプリ(Google Authenticator、Authyなど)で追加認証を行う。
その他パスワードを設定する際のポイントとしては、日本語のかな文字を使うことが有効とされています。
かな文字は日本特有の文字であるため、設定するだけで海外の攻撃をほとんど防ぐことができます。
ただし、パスワードでかな文字を使用できるケースは少ないので、WordPressではプラグインでログインの際にかな文字を入力することを設けるといった対策も有効的です。
2-3. 管理画面(wp-admin)へのアクセス制限
WordPressの管理画面へのログインは「wp-admin」「wp-login.php」とURLに入れるだけで簡単にログイン画面を開くことができます。
WordPressの管理画面(wp-admin)は、攻撃者にとって主要な標的の一つです。管理画面へログインされないためにまずはログイン入力画面にアクセス制限を設けることで、不要なログイン試行を防ぐことができます。
対策方法
- IP制限を設定し、特定のIPアドレスからのみログインできるようにする。
- ログイン試行回数を制限し、不正なログイン試行を防ぐ(Limit Login Attempts Reloadedなどのプラグインを使用)
- カスタムログインURLを設定し、「wp-login.php」のURLを変更して攻撃者の標的を減らす。
IP制限自体は簡単に行えますが、少し知識が必要となります。
そのため、今回ご紹介する中ではカスタムログインURLを設定することを推奨いたします。これはWordPressのプラグインにて簡単に変更できるため難しい操作がありません。
3. 高度なセキュリティ対策

ここでは、先ほど紹介した方法よりも高度なセキュリティ対策をご紹介します。
結論から言うと、高度なセキュリティ対策を行うには専用のセキュリティプラグインやWAF(Web Application Firewall)の導入が不可欠です。これらのツールを適切に活用することで、攻撃を未然に防ぎ、サイトの安全性を大幅に向上させることができます。
これらの、対策を施すことでサイバー攻撃に強い堅牢なサイトができあがります。
3-1. 高度なセキュリティプラグインの活用
WordPressには、強力なセキュリティ対策を提供するプラグインが数多く存在します。
今回紹介するのは、それぞれの攻撃に合わせた対策のできるプラグインなので心配ならとりあえず下記のプラグインをすべて入れることを推奨します。
- Wordfence Security
AIを活用したファイアウォール機能やリアルタイムマルウェアスキャンを備え、最新の脅威に対応できます。 - All In One WP Security & Firewall
ユーザーの権限管理やログインセキュリティの強化が可能で、初心者にも扱いやすい設計です。 - iThemes Security
管理画面へのブルートフォース攻撃を防ぐ機能が充実しており、不正アクセスのリスクを大幅に低減します。
3-2. WAF(Web Application Firewall)の導入
WAF(Webアプリケーションファイアウォール)は、Webアプリケーションへの不正アクセスや攻撃を事前に検出・ブロックするセキュリティ層です。WAFは、サーバー側で実行される通常のファイアウォールとは異なり、Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃を専門的に防ぐことができます。
WAFの導入は、特にサーバー側やWordPressの脆弱性を悪用しようとする攻撃に対して非常に有効であり、Webサイトのセキュリティを大幅に強化できます。例えば、WAFは以下のような形で役立ちます。
- 攻撃者のIPアドレスをブロック
攻撃者のIPアドレスを特定し、アクセスを拒否することで、リスクを最小化します。 - トラフィックのリアルタイム解析
送信されるリクエストを解析し、通常のトラフィックと異常なトラフィックを区別して、不正なアクセスを即座に防ぎます。 - 自動化された防御
多くのWAFは、機械学習やAIを活用して、日々進化する新たな攻撃手法に対応する能力を持っています。
4. その他のおすすめ方法

ここまで、セキュリティ対策についてご紹介してきましたがどれだけ厳重なセキュリティ対策を講じても、サイトが完全に安全である保証はありません。
サイバー攻撃や不正アクセスに対する対策を講じることは重要ですが、それだけでは万が一に備えることはできません。そこで、定期的なバックアップの実施がセキュリティ対策の一環として極めて重要な役割を果たします。
4-1. 定期的なバックアップの重要性
万が一、攻撃者によってサイトが改ざんされたりデータが破壊されてしまった場合でもバックアップがあれば迅速に復旧することが可能です。特にWordPressサイトは、頻繁に更新が行われるためコンテンツやデータベースの状態を最新のものとしてバックアップしておくことが非常に重要です。
バックアップの利点
- 迅速な復旧
攻撃によるデータ損失や改ざんが発生した際、バックアップがあれば、影響を最小限に抑え、迅速にサイトを復旧できます。 - サイトの移行や変更時の安心
サイトのテーマやプラグインのアップデート、サーバーの変更など、サイトに大きな変更を加える際にもバックアップがあれば安心して作業を行えます。 - 不正アクセス後の証拠保存
バックアップには、攻撃を受けた状態のデータを保存するという重要な役割もあります。これにより、不正アクセスの証拠を保持し、追跡や法的措置に役立てることができます。
4-2. バックアップ方法とツール
バックアップ自体は手動で行うこともできますが、自動バックアップツールを使用することで手間を省き、定期的なバックアップを実行することができます。WordPressには、非常に多くのバックアッププラグインがあるのでその中でも特に人気の高いものを紹介します。
- UpdraftPlus
WordPressのバックアッププラグインで、定期的な自動バックアップを設定できます。Google DriveやDropboxなど、さまざまなクラウドストレージにバックアップデータを保存することができ、万が一の場合でも簡単に復元が可能です。 - BackWPup
高機能なバックアッププラグインで、データベースやファイルを圧縮してバックアップできます。無料プランでも十分に利用でき、バックアップデータの保存先も複数選択肢があり、便利です。 - VaultPress
WordPress.comが提供するバックアップおよびセキュリティサービスで、リアルタイムでサイトのバックアップが行われます。特に自動バックアップと復元機能に優れています。
4-3. サーバーとクラウドストレージの活用
バックアップの保存場所にも注意が必要です。
サイトのバックアップデータをサーバーにそのまま保存していると、サーバーがダウンした場合や攻撃を受けた場合に一緒にバックアップデータも失われるリスクがあります。そのため、クラウドストレージを利用して、バックアップを別の場所に保存することが推奨されます。代表的なクラウドサービスには、Google Drive、Dropbox、Amazon S3などがあります。
クラウドストレージにバックアップを保存することで、サーバーが破損してもデータを守ることができ、さらにクラウドサービスの冗長性を活かしてデータ損失のリスクを減らすことができます。
5. まとめ
いかがでしたか?今回紹介したセキュリティ対策は、基本的なものから高度なものまで幅広く取り上げました。WordPressの安全性を高めるには、小さな対策の積み重ねが重要です。
「何から手をつければいいかわからない」という方は、まずは定期的なアップデートや強力なパスワードの設定といった基本的な対策から始めてみましょう。
余裕があれば、WAFの導入やセキュリティプラグインの活用など、より高度な防御策を取り入れることで、さらに安全性を高められます。
セキュリティ対策に「完璧」はありませんが、対策を講じることで被害のリスクを大幅に減らすことは可能です。大切なのは、常に最新の情報をキャッチし、定期的に見直しを行うこと。できることから少しずつ取り入れ、安全なWordPressサイト運用を目指しましょう。
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